期間限定掲載【「小鷹信光氏を偲ぶ会」についての10年目のお詫び】
海外ミステリ、ハードボイルド小説翻訳の第一人者であり、故 松田優作さん主演のテレビドラマ「探偵物語」の原作者としても知られる義父の小鷹信光氏が世を去り、今年2025年の12月で十年となりました。
そして2025年12月26日、氏のアメリカ探偵小説研究の集大成「パパイラスの舟」が文庫化されましたので、氏について少しだけ紹介させて下さい(さらに詳しくはWikipediaをご覧下さい)。

膨大な量のミステリ&ハードボイルド小説の随想

テレビドラマ放送当時の新聞広告
結婚したばかり、かつ独立開業したての細々とした収入の私に氏は、自著の装丁の仕事や自身の書斎の設計など、多くの仕事を創りだしては発注して下さいました。
氏の一万冊にも及ぶペイパーバックのコレクションを、棚から取り出すために人差し指を入れる10ミリの空間を書籍の上部に確保し、全てを収納するための本棚の設計に随分と苦戦したのを憶えています(しかも収まらなかった)。

完成した書斎はメンズマガジンに掲載もされました
さて、氏は晩年、「送る会を催して生前お世話になった方々をもてなして欲しい」と私たちを集めます。
小説家の義理の姉が中心となり、著名な旦那様も忙しい合間を縫って参画し、出版社の担当者さんやワセダミステリクラブの現役大学生の皆さんも集い、当時イベント業界でブースやステージのデザインを生業としておりました私は明治記念館会場の装飾担当となりました。

三か月の仕込み期間中に会場レイアウトから展示方法、明治記念館との打合せ、ノベルティの制作、そして氏が撮りためたROUTE 66アメリカ横断のスナップから、世界中のゴルフコースでのショット写真、別荘のあったアリゾナ州の荒野で素っ裸で書店を営むヒッピー中年男性(正確に言うと陰部だけを青い巾着袋に入れた姿)とのツーショット写真など、総計60枚をパネルに貼ってカットするという仕事をひたすら黙々とこなします。
松田優作さん演じる工藤俊作が劇中にアドリブで言った「日本のハードボイルドの夜明けはいつ来るんでしょうかね、小鷹信光さん」というセリフは会場のメイン看板になりました。
そして「偲ぶ会」当日。
開宴ギリギリまで頭にタオルを巻いて現場仕事をしていた私の肩をポンとたたく人がいます。
「新聞の記事見て慌てて来たよ」と叔父と従兄のふたり。

・・・さーっと血の気が引きました

仕事でお世話になっている方々、旧くからの友人知人、親戚縁者、大先生、大先輩、大恩人、氏の講演会に奔走してくれた翻訳会社の担当者さん・・・
私側の関係者に、私は誰ひとりとして、招待状を送付していなかったのです。
「忙しい」は「心」を「亡くす」、つまり「忙しい」と「忘れる」のは自然の摂理です。
・・・などと適当なことを言って誤魔化して生きて来たものの、ことに触れ思い出す、大失態の記憶と悶絶のウェイブ。

義父・小鷹信光氏の「偲ぶ会」の招待状が届かなかった皆さま。
この場を借りて私の不義理を心よりお詫び申し上げます。
十年というこの節目に、どうぞ禊ぎとさせて下さい。




COPYRIGH YAMAZAKI TARO DESIGN ROOM